編集部レビュー
表参道の路地裏にある「豊和」、熊本の馬刺しと備長炭のささみ串
編集部が自費で訪問しました 2008年訪問 掲載日 2026年8月31日 文・写真: 推し店編集部
教えてもらわないと辿り着けない一軒 表参道といえば洗練された街並みが浮かびますが、その裏手に広がる住宅地の一角に「豊和」はありました。看板を頼りに歩いて見つけるというより、場所を知っている人に連れられて初めて辿り着ける類のお店です。おしゃれ…
教えてもらわないと辿り着けない一軒
表参道といえば洗練された街並みが浮かびますが、その裏手に広がる住宅地の一角に「豊和」はありました。看板を頼りに歩いて見つけるというより、場所を知っている人に連れられて初めて辿り着ける類のお店です。おしゃれな街とは縁遠い私も、この日は誘っていただいた側でした。
駅からの距離自体は短いのですが、入り込むのは細い道。決して分かりやすい立地とは言えません。それでも金曜の晩に扉を開けると、店内は大勢の客で活気づいていました。照明を落とした店内には、静かで落ち着いた空気が流れています。
お通しから始まる小皿の連なり
最初に運ばれたお通しは、太巻きとかぼちゃの煮物、そして青汁という組み合わせ。青汁は果実のような風味があって、するりと喉を通っていきました。
肝入りイカの一夜干し(能登産・¥750)
噛むと程よい歯ごたえがあり、焼けた香りが鼻に抜けます。何より肝が濃厚で、この部分に目がない人にはたまらない一皿でした。
自家製ピクルス(¥750)
きゅうり、パプリカ、ニンジン、茗荷、大根の五種が並びます。酸味には角がなく穏やかで、口の中がすっきりと整います。茗荷を漬けたものは初めて口にしましたが、これがなかなかの発見でした。
馬刺しと炭火、この夜の主役
極上馬刺しの盛り合わせ(¥2900)
熊本県産を三種そろえた盛り合わせで、大好物なだけに心が躍ります。九州らしい甘口の醤油を添えていただきました。霜降りは脂の旨さが際立ち、思わず幸せに浸ってしまうほどでした。歯ごたえのある部位も文句なしです。そして初めて挑んだ「たてがみ」。脂がすっと溶ける一方で、クニクニと弾む食感が残るのが面白く、すっかり気に入りました。
比内地鶏の串焼き ささみ(備長炭・1本¥350)
手前から順に柚子胡椒、梅しそ、本わさびが並びます。表面に焦げ目はなく、見た目からしてぷりぷりしています。それでいて中心はまだレアです。ほろりとほどける外側と、弾力を残した中との対比が見事でした。三種のうちでは柚子胡椒に軍配。これを味わって以来、新鮮なささみを表面だけ軽く炙り、柚子胡椒でいただくのが私の流行になっています(あまりに安いお肉や、お腹の弱い方はお腹を壊す恐れがあるのでご注意を)。
アグー豚のロース炭火焼き(150g・¥3800)
アグー豚は沖縄の豚で、アミノ酸やグルタミン酸を多く含み、肉質が柔らかく脂身の香ばしい、入手の難しい品種だそうです。運ばれてきた時点で焼き色が食欲をかき立てます。実際、脂身は甘く、噛むほどに満たされていきました。ステーキソースと自家製のポン酢も並びましたが、どちらにも頼らないまま食べ進めてしまいました。良い肉ほど塩が似合う、という結論に落ち着きます。
豊和特製冷汁(佐賀海苔使用・¥950)
冷汁というとアジの干物やピーナッツが入るものと思い込んでいたので、出汁と味噌だけで組み立てられた潔い味わいには意表を突かれました。宮崎の味噌に仙台の赤味噌を重ねて仕上げているそうです。青じそを一緒に口へ運ぶと香りが立ち、気づけば器が空になっていました。
甘いもので締めくくって
自家製ティラミス(¥600)
マスカルポーネをたっぷり使った一皿。私の口には入りませんでしたが、見るからに良さそうでした。
りんごのコンポート(¥600)
こちらは私の手元に来た一皿です。キンと冷えた果肉にグレープフルーツが添えられ、さっぱりとした甘さで後口が軽く感じられます。アイスを一匙のせたらどうなるだろう、と余計なことまで考えてしまいました。
料理は最後まで外れがなく、大人の落ち着きをまとった空間も好みでした。難点は照明の暗さで、カメラを構えるたびに手こずります。記録を残したい人間には、少しばかり手強い相手でした。