編集部レビュー
蒲田で百年余、初音鮨のおまかせは演出も楽しい劇場のような時間
編集部が自費で訪問しました 2020年訪問 掲載日 2026年8月20日 文・写真: 推し店編集部
蒲田で百年余を重ねてきた寿司店 向かったのは東京・蒲田です。 都心から少し離れた土地にありながら、おひとり5万円以上という、気軽とは言い切れない寿司店です。 創業から100年以上を数える老舗です。 献立はおまかせのみ 品書きらしい品書きはな…
蒲田で百年余を重ねてきた寿司店
向かったのは東京・蒲田です。
都心から少し離れた土地にありながら、おひとり5万円以上という、気軽とは言い切れない寿司店です。
創業から100年以上を数える老舗です。
献立はおまかせのみ
品書きらしい品書きはなく、おまかせのコース一本でした。
少し早めに着けば、大将がシャリを切る様子も眺められます。
寿司に合わせる一杯は、やはり日本酒にしました。
ガリは角切りにしたものが出てきます。
筍と山うどのお吸い物
最初の一品は、やさしい味わいのお吸い物でした。
序盤から全力な勝浦の鮪
運ばれてきたのは千葉県勝浦産の鮪、なんと169kgの大物です。
撮影の時間が始まります。中治大将がお茶目で、何枚も撮りたくなりました。
部位ごとに切り分け、そこへ塩をひと振りします。
赤身からトロへと移り変わる色合いは、文句のつけようがありません。
山葵は御殿場産のものを合わせてくれました。
これまで口にした鮪で一番かもしれない、それほどの感動です。
味付けが塩だけだからこそ、素材の質の高さがそのまま伝わってきます。キメは細かく、旨みの濃さに驚きました。
この一皿のためだけに、もう一度足を運びたくなるほどです。
続いて出てきたのは、タグの付いた松葉蟹です。
こちらは後半の一品として登場します。
クエの焼き寿司
こんがりと焼き上げられたクエが出てきました。
焼き上がったクエをシャリと合わせ、大根おろしを添えていただきました。
身はふんわりとしていて、汁気もたっぷりでした。
裏返しの小肌
ここの握りはすべて大将の手から直接受け取ります。顔を上に向けて、そのまま口へ運ぶのが流儀でした。
(一貫目は、常連さんが食べ方を実演してくださいました。笑)
よその寿司屋ではやりにくい姿勢ですが、ここでは全員が同じ食べ方なので気になりません。なんとも面白いところです。
小肌はネタが裏返し、というあまり見かけない姿でした。
先に身が舌へ触れるぶん、いつもとは違うやわらかさと歯触りが感じられます。
三重の赤貝
これほどコリコリとした赤貝は初めて、と言いたくなる歯応えでした。
厚みもあり、強く記憶に残る一貫です。
鰆
赤貝とは打って変わり、鰆はやわらかく、繊維がほろりとほどけていきます。
スミイカとボラ子
からすみにしたボラ子と、スミイカを重ねて握ってくれます。
噛みしめると、ねっとりしたスミイカの甘さが先に来ます。後から追いかけてくるのは、唐墨の塩気とコクでした。
これは美味しいです。いつまでも噛んでいたくなる味でした。
大きなあん肝
あん肝はひとつ2.4kgあるものだそうです。
切り分けも大きく、ほおばると口いっぱいに旨さが広がります。なんとも贅沢です。
佐島の地ダコ
包丁でたたいてあり、やわらかい歯触りが楽しめる蛸でした。
大きなカジキ、女性はカットしてくれる
カジキは驚くほど大きな切り身です。
それをくるくると巻いた形で供されます。
あまりに大きいため、女性には切り分けてくださる心配りがありがたかったです。
旨みはしっかりありながら、大根おろしのおかげでさっぱりと食べられます。
大ぶりの赤崎の牡蠣
身がぱんぱんに詰まった牡蠣です。
こちらも手から直接受け取りました。
中にはフキノトウの味噌が仕込まれ、香りとほろ苦さが加わります。
エキスまで残さず味わえるのも嬉しいところで、旨みがこれ以上ないほど凝縮していて美味しかったです。
トラフグ白子と北海道 百合根の茶碗蒸し
見るからに大きく、プルプルとしたトラフグの白子が現れました。
これが上品な茶碗蒸しになります。
中からは、香ばしい焼き色のついた白子が現れました。
まったりとした口当たりに幸せな気分です。百合根は北海道産で、ホクホクとして甘みもありました。
松葉蟹のリゾット
先ほど見せてもらった松葉蟹が、鮮やかな赤に変わって戻ってきました。
身をほぐし、蟹味噌とシャリを合わせて混ぜていきます。
蟹の甘さ、味噌のコク、そしてシャリの酸味。この取り合わせが見事でした。
もっと食べていたくなります。
鮪のヅケを握りで
冒頭で切り分けられた鮪が、ヅケになって握りで登場です。
赤身、中トロ、大トロと並びます。
ほどよく漬かることで、生のときとは別の表情に変わりました。
なかでも大トロは、表面を炙って山葵をたっぷりのせた一貫でした。炙りの香ばしさと山葵の爽やかさが格別です。
全部混ぜの鮪手巻き寿司
鮪の魅力をすべて詰め込んだ手巻きでした。
この満ち足りた感じは言葉にしづらいものでした。ただ噛みしめるばかりです。
お椀
出汁のよく効いた味噌汁で、七味がぴりりとアクセントになっています。
干瓢
干瓢巻が出てくると、そろそろ締めかと感じます。
カステラのような玉子
甘くふわふわで、上等なカステラを思わせる玉子焼きでした。
甘味は別室「海の部屋」で
ひととおり料理が終わると、席を立って「海の部屋」へ移ります。
ステンドグラスの青が美しく、それまでとは違う空気が漂う面白い空間です。
ここでは、目の前で葛切りを仕上げてくださいます。
できたての葛切りは、それだけで嬉しいものです。
ちゅるんとした喉ごしで、満腹でもするりと入ってしまいます。
器に残った黒蜜は一度下げられ、そこへバニラアイスを盛って出し直してくれました。
なんとも幸せな甘味の時間です。
食後のコーヒーは大将が自ら淹れてくださいました。
最後の最後まで細やかな心配りを感じる、嬉しいひとときでした。
訪れてみて
箸をつけ始めてからおよそ1時間半。次から次へと、かなりの速さで料理が運ばれてくるスタイルです。
私はもともと食事のペースが遅いため、写真を撮って口に運ぶだけで手一杯でした(^_^;)
(産地や品名のメモは、途中であきらめてしまいました…笑)
あっという間の時間でしたが、終始楽しく、食材へのこだわりも伝わってきました。
金額を思えば頻繁に通える店ではありませんが、それでもまた訪ねたいと思わせてくれます。